アレルギー科

 近年、気管支喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、など、アレルギー関連の病気にかかるお子様が増えているように感じます。
 当院では、こうした病気の診断・治療を行なっておりますが、場合によっては採血が必要なこともあり、診断や治療の説明にも時間を要するため、一般外来での対応がむずかしくなっています。
 したがって、当院では第2、4週の火曜日の午後(4時~6時30分)に、完全予約制のアレルギー外来を設置しています。初診でのご予約は受け付けておりませんので、お子様のアレルギー疾患が気になる場合は、まずは一般外来を受診していただくようお願い致します。

気管支喘息


 気管支喘息は、空気の通り道である気道が炎症などで狭くなることによって、のどが「ゼーゼー・ヒューヒュー」と鳴ったり(喘鳴:ぜんめい)、咳や痰が出て呼吸が苦しくなる病気です。深夜、明け方など、通常の風邪ではあまりないような時間帯に症状が強くなる傾向があり、夜間の睡眠が妨げられます。一般的にはこのような状態を喘息発作と呼びます。こうした症状が比較的急速に、繰り返し出てくることも特徴です。 眠れない夜がある場合喘息を疑う必要があるかもしれません。

 遺伝的な体質も深く関連していて、ご両親のどちらか、あるいはその家系に喘息をもっている方(小児喘息の場合も含みます)がいることが多いです。さらにダニやハウスダストに対するアレルギーを持っている場合は喘息を助長します。喘息発作を起こしやすい誘因もいくつかあり、下記に挙げてみます。

1. 症状が出ない状態を維持する(発作を予防する)ために毎日使う薬

2. 発作が出てしまった時に症状が軽快するまで使う薬

薬の種類としては飲み薬、吸入薬、貼付薬がありますが、個々に細かい調整が必要ですので、外来にてお話しいたします。

 喘息はかつては難病とされていた時代もありましたが、治療薬の進歩は目覚ましく、小児期に発症した喘息はしっかり治療、管理すれば高い確率で治るようになりました。ただし、夜の咳込みが続いているにもかかわらず、薬を中断したままで長期間放置していると難治化し、成人喘息へ移行していくことがあります。「小児喘息は子どものうちに治す」が重要です。

食物アレルギー

 食物アレルギーとは、特定の食物を食べた時に、本来は起こらないはずの免疫反応が起こり、多くは30分以内に(時には食べている最中に)、皮膚の発赤・かゆみ、目の充血・かゆみ、嘔吐・腹痛、咳が出る、ゼーゼーして呼吸が苦しくなるといった症状がでるアレルギー疾患です。あるいはアトピー性皮膚炎という前述の慢性皮膚炎としてみられる場合もあります。 原因食物としては卵(鶏卵)、乳製品、小麦が代表的で、離乳食が始まる生後5~7か月から1歳くらいの間に発症することが一般的です。 これらは重症でない限り、多くは2~3歳までに軽快傾向が見られ、多くは小学校入学までには原因食物が食べられるようになっていきます。 つまり、ある年齢になると体が原因食物を受け入れるようになるわけです。最近はクルミ、ナッツ系アレルギーや後述するフルーツによる口腔アレルギーが増加傾向にあります。

診断確定には、

1.その食物を食べた時に確実に症状が出る(再現性がある)
2.その食物に対するアレルギー検査(採血が必要です)が陽性である

といった2つの条件が原則必要です。特に 1.の項目については私は必須と考えています。つまり、「原因物質が腸管を通して体の中に入ることによってアレルギー症状が誘発される」ことがこの病気の本質なのです。強調しておきますが、アレルギー検査が陽性のみでは確実な診断はできません。 検査が陽性であっても食べて何も症状が出ないことも多いからです。

「アレルギー検査」という表現は誤解を生じやすく、専門的になってしまいますが「アレルギー感作状態の有無を調べる検査」という表現が正確です。 詳しいことは診察室で直接お話ししたほうがよいでしょう。
 診断が確定した後は、6か月から1年間は比較的厳密に食事制限していただきます。 重症でない限りはその後、アレルギー外来にて極少量から段階的に原因となっている食物を食べていただいて、症状が出ない(アレルギー反応が起こらない)ことを毎回確認します。 これには3~4か月を要しますが、多くは普通に食べられるようになり、食事制限は不要となっています。「時期が来たら食べて治す」ことが目的かつ治療であって、「食事制限は目的でも治療でもない」のです。
 これらの管理は医師による細かい指示のもとに慎重に進められる医療行為であることを御理解いただきたいと思います。重症と考えられる場合は専門病院に御紹介しています。

 ごく一部の患者さんにはアナフィラキシーと呼ばれる同時に複数の症状(特に咳き込みなどの呼吸器症状を含む)が出て、慎重な管理を要する場合があります。こうしたケースは エピペン注射(自己注射)の適応がありますので、アレルギー外来で説明をいたします。処方も可能です。

口腔アレルギーについて

 近年急速に増加しています。キウイ、モモ、リンゴ、スイカ、メロンなどの果物を食べることにより、口の中のかゆみ、のどのイガイガ感が出ます。一般的には蕁麻疹などの皮膚症状は出ないことがほとんどです。多くは軽症ですが、学校管理下、つまり給食では念の為、除去が必要だと思います。詳しいことは診察室でお話ししたいと思いますが、「花粉症と密接な関係がある」ことがわかっています。

アトピー性皮膚炎

 

 アトピー性皮膚炎は皮膚の広い範囲に乾燥、かゆみ、発赤などが良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、反復して出現する慢性的な湿疹(皮膚炎)です。乳児期から発症しますが、2~3か月程度は軟膏を使用しながら経過をみないと判断できません。湿疹の程度が比較的強くても、初回の軟膏治療で治癒してしまうものは普通の乳児湿疹と言えます。

 アトピー性皮膚炎の根本的な原因は現在のところ、はっきりとはわかっていませんが、遺伝体質が関係していることは確かで、これに環境因子などが加わって発病すると考えられています。食物アレルギーが深く関わっていることもあります。  

 治療としては保湿を中心としたスキンケアと軟膏やかゆみ止めの内服薬等を用いた管理が基本となります。皮膚炎を抑えることが最も重要ですが、長らくステロイド軟膏がその中心でした。ところが近年、非ステロイド軟膏でかなり効果のあるものが開発され、普及してきています。ステロイド軟膏は最も効果がありますが、長期連用では確かに副反応が出ます。新しい軟膏は副反応が極めて軽微であり、長期使用が可能となっていることが特徴で、しかも単なる保湿剤と違い、皮膚炎そのものを改善する効能があることから、現在かなり注目されています。中等症以上のアトピー性皮膚炎に対しては、当初はステロイドで十分に炎症を抑えてから、新しい軟膏でいい状態を維持するといった管理が今後中心となってくるでしょう。
成長とともに治っていくことも多い病気ですので、あせらずに根気よく治療を継続してください。「皮膚炎を放置することが難治化につながる」からです。

花粉症(季節性)

 花粉症とは、アレルギー性鼻炎の一種で、くしゃみや鼻水の連発、鼻づまり、目のかゆみといった鼻の症状に加え、目のかゆみ、充血、涙といった目の症状(アレルギー性結膜炎)を伴うものです。 年長児や成人では、のどのかゆみ、全身のだるさなどを訴えることもあります。 原因は植物の花粉で、季節によって種類が異なり、スギやヒノキのは有名ですが、カモガヤ、ハルガヤ、ブタクサ、ヨモギ、ハンノキなど、種類もたくさんあります。
 スギの飛散時期および飛散量は年によって異なりますが、2月になると症状が出てくる方が増えてきます。ヒノキもある場合は5月頃まで続くことがあります。それ以降も症状が持続する方はイネ科植物のカモガヤ、ハルガヤのアレルギーを有している可能性があります。だだし、スギと違い、飛散範囲が数十メートルととても狭いので、重度の症状が出ることは少ないです。

スギ
ノキ
カモガヤ


 スギ、ヒノキの飛散時期に毎年典型的な症状の出る方は必ずしも検査が必要なわけではありません。膨大な本数のスギ、ヒノキが全国に植林された日本では、花粉症は国民病という認識が一般的になっていますので、症状の確認ができれば、薬の処方はすぐにできます。

ブタクサ
ハンノキ

 天候が雨の場合は比較的症状が軽いですが、翌日晴れて、風が強くなれば一気に悪化します。対処としては、家の中に花粉を持ち込まないことが大切ですから、玄関で衣服についた花粉を掃う、手や顔にもたくさんの花粉が付着していますから、洗面所に直行して、よく洗うようにしてください。

 抗アレルギー薬の内服は花粉情報も参考にしながら2月に入ったら(症状が出る前に)飲むようにしたいものです。 点眼薬や鼻腔に噴霧するスプレーが処方されていれば、必ず毎日使用するようにしてください。「症状がひどい時だけ使用していると、薬の効果が実感されにくい」と思います。「花粉の季節は症状の重い軽いに関係なく薬を継続する」ことをお勧めします。